公認移民コンサルタントと移民・難民保護法91条

カナダの有資格移民コンサルタントにとって、その職業の核となる必読書は Immigration and Refugee Protection Act(移民・難民保護法)という、連邦法規(= 国家レベルで適用される法律)です。業界ではその頭文字をとってIRPA (ərpa)、または単に Actと呼ばれることも。

IRPA91条1項

IRPAの91条はRepresentation or Advice と見出しが付けられ、IRPAに基づく申請 (一時滞在ビザ、就学、就労許可証、永住権等)において、代理申請、および助言を行える資格があるのは誰であるかを規定しています。 以下に原文を引用します。

Representation or advice for consideration

91 (1) Subject to this section, no person shall knowingly, directly or indirectly, represent or advise a person for consideration — or offer to do so — in connection with the submission of an expression of interest under subsection 10.1(3) or a proceeding or application under this Act.

Reference: Immigration and Refugee Protection Act (S.C. 2001, c. 27)

少し解説をするとconsideration は金銭を含むあらゆる報酬を意味します。shall は法律文や契約書などで使われる形式的な must と言えます。参考までの日本語訳は以下の通りです。

「この法律 (IRPA) に基づいて行われる申請に関連して、いかなる者であれ報酬を求めて、故意に、直接、間接を問わず人の代理人になってはならない。また、助言をしてはならない。」

このように「誰であれ、___してはならない」と、先にまず「全ての人にとって禁止されている行為である」と警告した後、unless や except (for) を使って「例外として___は許可される」という言い回しは、法律文によく見られます。IRPA91条の場合、以下のように条文が続きます。

IRPA91条2項

Persons who may represent or advise

(2) A person does not contravene subsection (1) if they are

(a) a lawyer who is a member in good standing of a law society of a province or a notary who is a member in good standing of the Chambre des notaires du Québec;
(b) any other member in good standing of a law society of a province or the Chambre des notaires du Québec, including a paralegal; or
(c) a member in good standing of a body designated under subsection (5).

Reference: Immigration and Refugee Protection Act (S.C. 2001, c. 27)

contravene –(法律など)〜に違反する

この91条2項では “下記に該当する人は91条1項に違反しない”と規定されています。

(a) はカナダの各州、および準州の弁護士会に所属の弁護士と、ケベック州の公証人。
(b) に該当するのは現在、オンタリオ州の弁護士会 (the Law Society of Upper Canada ) に所属のパラリーガルのみ(但しこのライセンスのみで移民法のもとに取り扱うことのできる職務は限られています)。
(c) が公認移民コンサルタントに、上述の業務を行うことを法律上可能にする条項です。

※in good standing とは各統制機関(弁護士会、移民コンサルタント協会等)で定義が異なりますが、関連の規定を正しく遵守し、その時点で弁護士や移民コンサルタントとしての職務が可能であることを表す、会員のステータスです。何らかの理由でライセンスが一時停止(suspended)されていたり、剥奪(revoked)されていたりする場合は、in good standing とは言えませんので、その会員は職務を履行することができません。

前述のIRPA 91条2項 (c) で は同じ91条の5項への言及がありますので見てみましょう。

IRPA91条5項

Designation by Minister

(5) The Minister may, by regulation, designate a body whose members in good standing may represent or advise a person for consideration — or offer to do so — in connection with the submission of an expression of interest under subsection 10.1(3) or a proceeding or application under this Act.

Reference: Immigration and Refugee Protection Act (S.C. 2001, c. 27)

The Minister はここでは The Minister of Immigration, Refugee, and Citizenship (=移民・難民・市民権大臣) を表します。regulation とは Immigration and  Refugee Protection Regulation を表し、これは IRPAの補助的な役割を果たす規程集で、IRPRとも呼ばれます。IRPAが移民、難民政策の目的や、基盤となる原則を定めるのに対し、IRPRは各永住権プログラムや、一時滞在資格の要件など、より細かいルールを定めます。

この法律に基づいて、大臣に任命を受けた団体が Immigration Consultants of Canada Regulatory Council (ICCRC) です。ただし、ICCRCは政府機関ではなく、民間の非営利法人です。 カナダ全州の移民コンサルタントを統制するので、national organization とは言えますが、federal agency ではありません。 現在ICCRCの他に、同じ主旨の認定をカナダ政府より受けている団体はありませんので、公認移民コンサルタントはすべて、ICCRC所属の会員 (= Regulated Canadian Immigration Consultant, RCIC)ということになります。

上記のように、法的に代理人、または助言を行うことが許されている個人(弁護士、ケベック州公証人、公認移民コンサルタント)は、一括してAuthorized Representativeと呼ばれます。
法的に許可されていないにも関わらず、これらの行為を行う個人や会社は Unauthorized Representative、また非公式にGhost Consultant(ゴーストコンサルタント)と呼ばれ、カナダ移民局 (IRCC) はこれらの無認可代理人を経由しての申請は違法行為にあたることを警告し、一切受け付けないことを明言しています。

IRPA91条1項に違反した者の処罰は、同じく91条の9項で規定されています。

IRPA91条9項

Penalties

(9) Every person who contravenes subsection (1) commits an offence and is liable

(a) on conviction on indictment, to a fine of not more than $100,000 or to imprisonment for a term of not more than two years, or to both; or
(b) on summary conviction, to a fine of not more than $20,000 or to imprisonment for a term of not more than six months, or to both.

Reference: Immigration and Refugee Protection Act (S.C. 2001, c. 27)

on conviction on indictment – 刑事告訴にて、imprisonment – 投獄、summary conviction – 略式起訴

このように、懲役刑の可能性もあるかなり厳しい罰が定められています。深刻なケースは時々メディアに報道されるなど、一般の人もそれによって注意を喚起されるはずですが、被害者がカナダの生活、常識に不慣れな外国人である場合が多いため、軽微な被害も含めて、こういった違法行為が後を絶たないというのが現状です。

また、カナダ国外となるとカナダの法律が及ばない”無法地帯” であるため、当局もそのように違法に行われた申請を受け付けない、という受け身の形でしか対処できないのが現状です。

カナダの日系コミュニティーや、カナダに渡航する日本人の立場から、IRPA91条に抵触する具体的な状況は別の機会で考察したいと思います。