
カナダはアメリカ合衆国と同じく、連邦国家という国家形態をとります。連邦国家としてのカナダの特徴の一つとして、事柄によって、連邦政府(federal government)と州政府(provincial government)のどちらがそれに関する法律を作るかが憲法(The Constitution Acts, 1867 to 1982)のもとに定められています。
国と州の役割は憲法のもと、以下の通り分配されています。
1. カナダ議会(国会)に立法権が与えられている事項
連邦政府は主に、国防など国全体に影響のある事柄について法律を制定します。
- 公債と公物
- 州、準州間での商取引と国際貿易の規制
- 失業保険
- 直接課税、関節課税
- 郵便業務
- 国勢調査、統計
- 国防
- 航海/海運
- 検疫
- 海洋漁業と内水漁業
- 異なる州、準州間での連絡船
- 通貨と貨幣
- 銀行業、銀行法人の設立、紙幣
- 計量、測量
- 破産、倒産
- 特許
- 著作権
- インディアン(先住民族)/インディアンの特別保留地
- 市民権
- 婚姻/離婚
- 刑法と刑事訴訟手続き
- 刑務所(Penitentiaries – 18歳以上、2年以上の形を受けた犯罪者の刑務所)
- 二つの州を接続したり、州の境を越える建築工事、一つの州内であっても国益または他州の利益となる建築工事
これらの問題に関しては、カナダ全土で同じ法律やルールが適用されます。
2. 州議会が独占的な立法権を持つ事項
州政府はその州内の問題についての立法の権利が与えられていますが、教育や病院など、日本では国全体で同じ法律が適用されるような事柄でも、州によってそのシステムが異なります。
- 州内での直接課税
- 州が所有する公有地の管理、売却
- 刑務所(Prisons – 2年未満の刑を受けた犯罪者の刑務所と、未成年犯罪者の刑務所)
- 病院
- 自治体
- 婚姻の執り行い
- 財産権と公民権
- 民事司法、刑事司法の執行
- 教育
- 会社設立
- 天然資源
- 局地的、私的性質の事柄
3. 国と州が共同で管轄する事項
- 老齢年金
- 移民
カナダの移民プログラムに、フェデラルスキルドワーカーなど、連邦政府が主体となって取り組む移民プログラムと、州政府が主体となって運営するプロビンシャルノミニープログラムが存在するのは、憲法上の規定に基づいていることなのです。
- 農業
また、下記の分野における行政の取り組みは、憲法のもとでは国、または州への管轄が明確に割り当てられていません。立法する事柄によって、国、または州が法律を制定します。
- 環境
- 公衆衛生
その他
州に立法権が与えられていない、あらゆる問題については国が立法権を持つとされています。例えば、テレコミュニケーション(ラジオ、テレビ、インターネットなど)については、国が法律を制定します。
こういったことは、普段あまり意識することはないかもしれませんが、カナダに移住をする場合は、公共サービスなど、自分がどちら(国か州)の政府機関とやり取りしているのか、また、そのサービスについては国全体で同じルールが適用されているのか、またはその州独自のルールが適用されているのかなど、知っておくと何かと便利です。